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体とこころのストレッチを

体とこころのストレッチを

                   学生相談室カウンセラー 篠田亜美

 

 みなさん、はじめまして。今年の4月から新しく学生相談室のカウンセラーになりました、篠田といいます。これからよろしくお願いします。今年度のスタートは、新型コロナウイルスの影響で普段とは大きく異なる状況となりましたね。

 特に、新型ウイルスの感染対策により行動に制限がかかり、コミュニケーションの大部分がスマホやPCなど通信機器を介したものに限定されてしまっているのは大きな変化だと思います。現在のような人との接触を減らさなければならない状況下では、通信機器は非常に便利なものですが、実際に会って肉声を聞いたり、触れ合ったりするコミュニケーションとは質が異なるように感じます。

 

 私たちが誰かと直接会う時、その場の匂いや雰囲気などの情報も取り入れ、気付かぬうちに五感を総動員しています。しかし、電話やメールなどは、聴覚のみ、視覚のみで情報を処理することになります。

 

 テレビ電話であっても、聴覚と視覚の二つしか使いません。普段はいくつかの感覚器官が分担して処理している情報を、限られた器官で処理することは負担が大きくなり、体とこころのバランスが崩れやすくなるのではないかと思います。

 そんなときにオススメしたいのが、家の中でできる簡単なストレッチです。例えば、手のひらも腕もぐっと広げるようにして、大きくばんざいをしてみてください。思ったよりも体が凝り固まっていることに気付く人もいるのではないでしょうか。体を動かす機会が少ないと、家の中で少し体を動かすだけでも血のめぐりの良さを実感できます。

 

 ストレッチはなんだか面倒くさいという人は、床に直接寝転がって、軽く目を閉じ、力を抜く時間を作ってみてください。特に、眉間、奥歯、舌の付け根に力が入ってないか確認します。鼻から息を吸って、ゆっくり吐き出します。使いすぎた部分の力がほどけるだけでも、リフレッシュできると思います。

 

 体がスッキリすると、少し気持ちが楽になり、上向きになることがあります。家の中で過ごす時間が多くなって鬱々としてきたら、体と同時に心もストレッチする意識で体を動かしてみてください。     

 

(No.79   2020年5月21日)

心のドローンを飛ばそう

心のドローンを飛ばそう

                   学生相談室カウンセラー 高石恭子

 新入生のみなさん、ご入学おめでとうございます。在学生のみなさんは、新たな一年の始まりです。これから何をしたらいいだろう? 何をしなければいけないんだろう? 後悔しないようにするには? あれもこれもしたいけど、時間もお金も足りない! まだ何も手がついていないのに疲れてしまった…。さまざまな気持ちが交差する季節ですね。

 もし、焦りや不安が高まってきたら、ちょっと足を止めて、少し大きな視野とスパンで自分のこれからを眺めてみることが役に立ちます。

 

 みなさんは、「ライフサイクル」という言葉を聞いたことがありますか。

 

 「人生50年」と言われ、企業の定年も長くて55歳ぐらいだった昭和の時代には、一生は、学んで、働いて、次世代を育てて、引退して終わりという「リニア(直線)」のイメージで捉えられていました。人生はもっとシンプルだったのです。

 

ところが、平成の時代には「人生80年」になり、第2の人生(引退後)をどう生きるかがテーマになりました。令和の今は「人生100年」と言われています。長寿化と共に、心理学では人生をリニアではなく、乳幼児期、児童期、思春期青年期、若い成人期、中年期、老年期と、いくつもの「サイクル」として捉えるようになっています。それぞれの期(ライフサイクル)に固有の成長課題や危機があるという考え方です。

 さて、私からみなさんに提案したいのは、「学生生活サイクルに沿ったプランを立てよう」ということです。

人生同様、学生生活にもサイクルがあり、その時々に大切な課題があります。入学期には、広がった世界への適応や自主性の発揮、2~3回生前半の中間期にはじっくりと自分探し、そして3回生後半から4回生は社会に出るための巣立ちの準備(あるいは進学というライフコース選択の決断)が必要です。

 

この1年をどう過ごし、何に使うか。

 

心のドローンを飛ばして、少し未来の、少し広い世界を上空から見渡してみてください。何十年も先のことを、リアリティをもって想像するのは無理ですが、ドローンが飛び、戻ってこられるぐらいの距離を見渡すことはそんなに難しくないはずです。

 

 もし、それでもなかなか不安が消えないという場合は、カウンセラーも一緒に考えるお手伝いをします。誰かに「話す」ということは、自分の考えを整理する手助けになります。

 

どうぞ、気軽に尋ねて来て下さい。 

(No.78   2020年4月1日)

時は移りゆく、一人ひとりの

時は移りゆく、一人ひとりの生命と共に

        

             

                   学生相談室カウンセラー 青木健次

 

 2020年である。まず個人的なことを2つ。

 1つは、1964年の東京オリンピックは当時の国立競技場の開会式を見ることができた。クジ運である。1つの市や郡から1人ずつ参加できたのだが、通っていた中学校の校長が引き当ててくれたのだ。

 

 すばらしい青空の王輪のマークが印象に残っている。そのころから約20年の高度経済成長で先進国の仲間入りをした。その後バブル、その崩壊と次の方向性がみえなくなっている。だが、これは当然のことだ。前を追いかける時は目標はいやでもわかる。先頭グループに出てしまって、ペース配分がわからなくなって早くも30年なのではなかろうか。

 

 天然資源に乏しく、人口でさえ世界の10位以下、面積にいたっては50位以下。自然災害も多い。たとえば9回目のラグビーのワールドカップで、天候のため試合が中止になったのははじめてということだった。

 

 オランダのように風車を利用してきていたら毎年のように再建の必要があっただろう。今は風力発電もあるが初期投資が大きくなる。もっとも、日本列島が引っ越すわけにはいかない。これらの所与の条件の中で持続可能な社会を構築しつづけるしかないだろう。

 

 もう1つ個人的なこと。この3月でいよいよ40年以上の学生相談の現場から離れる。いろいろあったようで、なんとかなってきた。

 

 統計的には日本は、世界も、より豊かで安全になってきた。古希など死語だ。しかし、それぞれの個人にとって思いがけないことがおこる。体は完全ではないし、人生も予測できないことがおこる。全体を支え個人を支援するシステムは時代に合わせて成長していかねばならない。

 200年前は文化文政の都市文化のころだ。封建制の不合理だらけでもあったが、さて200年後、「21世紀の人間は変なことを考えたんだなぁ」と進歩するか。

 

「あのころはよい時代だった」になるか。結局は大小のベクトルの壮大な合成であり

地球規模であるのもさけ難いだろう。

 

矛盾をはらみつつ地球は回っていく。

 

様々ないのちをのせて。

(No.77   2020年2月5日)

小春日和

小春日和

                     

                  学生相談室カウンセラー  渡里千賀

 

 朝晩の冷え込みが増し、段々と冬の訪れを感じる季節となってきました。気温の変化に体調を崩す人も増えてきたように思います。

 

 皆さんは、「小春日和」という言葉をご存じですか?「春」という漢字が入っていますが、実は晩秋から初冬にかけて使われる冬の季語で、この時期には珍しい穏やかな暖かい天気のことを意味します。

 

暖かいと言っても、本当の春に向かう暖かさではなく、寒い冬に向かう一時的な暖かさを指します。小春日和は長くは続きません。前後で最高気温が5℃以上違ったりします。

 

さらに、晴れると夜は放射冷却で冷え込み、寒い朝を迎えることが多く、1日の気温差が10℃以上になることもあり、風邪をひいたり心臓や血管への負担が大きくなるので、体調管理の観点からすると要注意です。

 

 同じ天気を意味する言葉は世界各地にあります。

 

ドイツでは「老婦人の夏」と呼ばれています。9月のよく晴れた朝に、「サラグモ」と呼ばれる蜘蛛がお尻から糸を出しながら飛ぶそうで、それが老婦人の白髪のようだからこの名前がついたとされています。(ドイツは北海道より北にあるので9月はもう寒いようです。)

 

イギリスでは「聖マルタンの夏」、これは11/11の聖マルタン祭という祭日の頃に多い天気だからだそうです。

 

アメリカでは「インディアン・サマー」と言い、この時期インディアンが冬に備えて収穫物を貯蔵する慣習を持つことが由来となったそうです。

 

 「小春」という言葉は、暖かさや明るさを連想させつつ、その過ごしやすい日和は長続きしないため、どこかはかなさを帯びています。季語として使用された俳句をご紹介します。

 

 玉のごとき 小春日和を 授かりし    (松本たかし)

 古家の ゆがみを直す 小春かな     (与謝蕪村)

どちらの句からも、天から授かった宝石のような小春日和へのありがたさが伝わってきます。

 

 寒さの続くこの時期は、どうしても体が縮こまり、外出にも消極的になりがちです。貴重な小春日和の陽だまりをぜひ味わって下さい。

 

また、日常の中でも、小春のような、暖かさを帯びたほっこりできる場所や時間、アイテムを見つけて楽しんでみて下さい。

(No.76   2019年12月1日)

体験することと想像力

体験することと想像力

                     

                   学生相談室カウンセラー 松本知子

 去年の学生相談室だよりで初めて落語の寄席に行ったと書きました。今年は初めてなんばグランド花月で吉本新喜劇を観に行って来ました。特にお笑いが好きという訳ではないですが、行く機会があったので乗っかってみました。

 

 私が観に行った回は、新喜劇の前に落語や漫才もあるものでした。週末ということもあり、お客さんは2階席までびっしり。今年話題になった吉本のギャラのことがネタになっていたりしました。

 

スーパーマラドーナや西川きよし、桂三度(世界のナベアツが、今は噺家となっていたのを初めて知りました)といったTVでしか見たことのなかった人を生で見るという、ミーハー心をくすぐる演者が出ていたり、客席を巻き込む漫才もあり、楽しい時間でした。新喜劇も予想以上に面白かったです。自分でもびっくりする程、見入っていました。体験すること・体感することの大事さを改めて感じた1日でした。

 実際に体験することの一方で、人間にある素晴らしい才能の一つとして、想像力が挙げられるかと思います。エミリー・ブロンテは結核を患ったものの、医者の治療を拒んで30歳という短い生涯を終えました。その人生の殆どを実家から離れることなく、しゃべるのは家族だけという、今でいうひきこもりのような人生でしたが、『嵐が丘』を書き上げています。想像力を最大限に発揮して描かれた作品として有名です。

 実際に体験すること・体感することと、人間の持つ想像力という力とは両翼なもののように思います。どちらも大切ですが、現代は体験する力も、想像力も弱くなっているように思います。ネットやスマホが充実した結果、すぐに連絡が取れ、想像を膨らませずとも情報がさっと手に入り、状況を知ることが出来てしまいます。

 

とても便利な世の中ですが、残念ながら自身で体験する力や想像力は乏しくなっているように思います。今の時代だからこそ、自分で動いてみることや、思いを巡らしてみることを意識してやってみませんか。自分自身に新たな発見があるかもしれませんよ。

(No.75   2019年10月20日)

夏から秋へ

​夏から秋へ

                   学生相談室カウンセラー 青柳 寛之

 

 この文章を読んでいる頃にはもう後期が始まっているでしょうか。

 

春に次ぐ節目の時期ですね。春は桜が咲いたりして目にもその印象が強いですが、秋はどうでしょう。この文章を書いているのは9月半ばですが、強い日差しと蒸し暑さの中、見事な入道雲が見え、にわか雨と雷に驚かされる日がまだまだあります。

 

続く曇り空に雨が降ったり止んだりの日もあり、さらにまた台風のシーズンでもあります。その中に、からりと晴れたり、空の高いところにうろこ雲が見られる日があったりで、まさに季節の変わり目、夏と秋とがせめぎ合っているという感じがします。

 

 ちょっと前までは9月なのに何でこんなに暑いのか、と思う日もありましたが、「暑さ寒さも彼岸まで」という言葉にあるように、少しずつ過ごしやすい日が挟まるようになっています。

 

極端な場合、昼は冷房、夜は暖房が欲しくなるような日もあったことを思い出します。9月にかけては、鳥の羽が夏羽から冬羽に生え換わる時期でもあると言います。

 

私たち人間も、真夏に比べると過ごしやすくはなりますが、今度は寒い方にからだを合わせていかねばなりません。急に気温が下がったりすることも多いので、実はからだには結構な負担になっているかもしれません。

 

春から夏に向かう時とはまた違う負担ですね。私は、夏から秋については、坂を下るようなイメージを持っています。気温の下がり方に上手く歩幅を合わせることができないと、足を踏み外してしまう、というような感じです。

 よく、読書の秋、芸術の秋、スポーツの秋、などと言われますが、日々の生活に打ち込んでいると、季節のことなどあまり考えないかもしれません。しかし、それは私たちの日常生活を入れる大きな入れ物でもあります。そんな目で、空を見てみるといいかもしれません。

(No.74   2019年9月13日)

​日本の未来を考えてみませんか?

日本の未来を考えてみませんか?

                   学生相談室カウンセラー 友久茂子

 

 前期テストが終わればいよいよ夏休み、夏休みに何をしようかと考えている人も多いでしょう。そこで私は「日本の未来について考えること」を提案します。

 皆さんは「2050年問題」という言葉を聞いたことがありますか。「2050年問題」とは2050年の日本や世界で予想される問題、例えば、少子高齢化、人口減少、労働力の減少、地球温暖化、気候変動、AIによる仕事の減少といったことです。

 2050年といえば、私はこの世にいない可能性が高いので、「まっいいか!」という気もします。でも、大学生の皆さんは50歳前後になり、社会の中心的存在になります。そして、その頃には75歳以上の高齢者が25%~40%になり、日本の総人口は25%減少すると予測されています。

 

また、環境問題としては水不足、生態系の崩壊、インフラの老朽化、空き家の増加などがあります。さらに、AI化といった技術力はどんどん進み、今は人間しかできない仕事もAIがやってしまって、働きたくても仕事がないという人が増えるかもしれません。

 

しかも、技術の進化は必ずしも人間にプラスに働くとは限りません。それを吟味する能力が技術の進化に追いつかないといった問題です。

 

そこで夏休みには、日本の未来「2050年問題」に向き合って体感して下さい。少子高齢化や人口問題は、過疎地を旅すればすぐわかります。

 

労働力の減少は大都会のコンビニに入っただけでも、そこで働く外国人の多さに驚かされます。気候変動や温暖化は、日々私たちも感じてはいますが、避暑地と言われた地に足を延ばしてみると、かつては窓を開けるだけで快い風を感じることが出来た建物にクーラーが多数設置してあるのに驚くでしょう。

 

ちょっと足を延ばして、温暖化で海に沈むかもしれない島々を訪ねてみるのも「2050年問題」の当事者として意義あることでしょう。

(No.73   2019年7月1日)

                   

​雪

                   学生相談室カウンセラー 西浦太郎 

 こんにちは。暑い日が始まっていますが、皆さんはいかがお過ごしでしょうか。暑い時に暑くなる話をしてもあれなので、少し涼しい話を。

 

 突然ですが、ここで質問です。カナダのイヌイット(昔はエスキモーと呼ばれていました)の人たちは、「雪」を説明する言葉はいくつ持っているでしょうか? 

 

答えは、雪に該当する言葉が6種類、そこから派生する言葉を合わせると約20種類だそうです。

 

ベースの6種類は、「降雪=カニク」「溶かして水にする雪=アニウ」「積雪=アプト」「きめ細やかな雪=プカク」「吹雪=ペエヘトク」「切り出した雪塊=アウヴェク」です。(宮岡伯人『エスキモー 極北の文化誌』より)。

 

 僕はせいぜい、雪を見ると、「雪だ」とか、「さらさらした雪」、「(溶けかけた)べちゃべちゃした雪」ぐらいしか言えないです。恐らく、彼、彼女らは厳しい自然の中で、雪や大気の状態を読み取り、その中で生きていくことに長けていたので、これだけの言葉が発達したのでしょう。

 

 ちなみに雪ではありませんが、皆さんは音楽の「ド」の音はいくつあると思いますか?もちろん、音階は関係ない場合です。答えは、もちろん一つです。

 

ただ、音楽家の坂本龍一さんは、「ドの音は皆、一緒の音だと思っているけど、違う。ピアノで、10人かドの鍵盤を弾けば、10通りのドの音がある」そうです。

 

 一つ一つの音の中に込められたその人の有り様にこそ、私たちは耳を傾ける必要があるのかもしれません。色にしても音にしても、色々と奥が深いんですね。

 

生活が忙しいと、全てが速く流れていきがちです。人の話をゆっくり聞く余裕もなく、「流して」しまいがちです。だけど、細かい些細な変化や、何かを読み取るのは、私たちのこころの余裕も関係していそうです。

 

自然の中にいるときも、人と一緒にいるときも、普段より少し、ゆっくりとこちらが目や耳を凝らしていると、違う風景や、その人の新しい面が見えてくるかもしれません。

(No.72   2019年6月1日)

ちょっと特別な時間の過ごし方

ちょっと特別な時間の過ごし方

                   学生相談室カウンセラー 豊原響子

 はじめまして。4月から毎週火曜日に学生相談室でカウンセラーをしています、豊原響子と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

 さて、突然ですが、みなさんにとってちょっと特別な時間の使い方というとどんなことが思い浮かびますか?私はたまに思い立ったときに、手紙を書いたり撮りためた写真を現像してもらいに行ったり、いつもより丁寧に料理をしたりして過ごしています。

 

 最近は、インターネットやコンビニ・外食のおかげで簡単・便利に必要な情報やものを手に入れることが出来ますが、あえて時間をかけて何かを“作る”ことや“待つ”ことをしてみるのも、それはそれで贅沢な時間の使い方だなと思っています。

 

忙しい日々のなかではそんな余裕もなくなってしまいがちですが、少しでも自分にとって特別な時間を過ごすことが出来れば、ほっと心も休まりどこか気持ちの余裕も生まれるかもしれません。矛盾するようですが、たまにはちょっと無理をしてでも特別な時間を過ごしてみるのもいかがでしょうか。

 新年度が始まってから早くも1ヶ月と少しが経ちました。新入生のみなさんも、2回生以上のみなさんも、調子はいかがですか?少しずつ日々のサイクルに慣れてきた人もいれば、緊張の糸がゆるんでドッと疲れが出てきた人、あるいは自分の今の状態なんて考える間もなかった人もいるかもしれませんね。

 

連休でゆっくり出来るかと思いきや、ようやく慣れてきた新年度のリズムが崩れてしまった人も少なくないのではないかと思います。

 

慌ただしい日々のなかでも、あそこに行けば、あの人に会えば、あの時間はほっと落ち着ける、学生相談室もそんな存在の一つになればと思っています。

 

ぜひお気軽にお越しください。お待ちしています。

(No.71   2019年5月14日)

寝るのは大事な仕事

寝るのは大事な仕事

                        カウンセラー 青木健次

 春である。新たに甲南大学生として出発する方々もいるであろう、おめでとうございます。在学生も去年までを振り返って、反省することもあったりして、今年はこう頑張っていこうと決意を新たにしているかもしれない。少し水を差すようだが、学生相談室から気づいたことを、念のために、述べておきたい。

 

 実は4月はつい調子を崩しやすい時なのである。陽気もよくなって、桜や多様な花々が咲く。小鳥たちもにぎやかになる。浮かれやすい季節なのだ。人間も、この日本では、3月末で年度が終り4月から新年度になる。つい「スタートダッシュ」を意識することが多い。

 

ところが、無意識的にも、体調的にも変化がおきやすい季節なのだ。日差しは日に日に長くなり気温も上っていく。特に昼が長くなった分夜が短くなっていくので睡眠不足に気をつけたい。生活が変ればとりわけそうだ。

 

2つ注意しておく。日本人は世界の先進国からみて睡眠時間が1時間程短い。そのため電車の中などで、今はスマホをいじっている人がほとんどなのだが、かつては居眠りをしている人が非常に多かった。海外からの旅行者が驚く程に。

 

日本人の居眠りについて研究した人が質問すると「安全だから」と日本の治安のよさを自慢することが多かったそうだ。たしかに犯罪は少なく治安はよい、誇ってよいことだ。

 

だが、睡眠不足を取り戻しているのだ。人間は日中の活動のためには、睡眠中にその日の疲労物質を細胞レベルから取り除き、翌日の活動に必要な物質を整える。かつ、尿がたまると目が覚めてしまうので抗利尿ホルモンで尿の生成を抑え、細胞内だけでなく、細胞間でもガンに発達しかねない異常細胞を処理する。

 

こんなすごいことを睡眠中にやっているのだ。

 

ただ、一人一人がその時に必要な睡眠さえとっていれば、体にはそういう仕組みが進化によってできている。

 

ぜひ、授業中ではなく布団で熟睡してもらいたい。

(No.70   2019年4月1日)

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